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トップページ > ナースによる患者・家族への電話相談技法 (日野原重明)

基本編/ナースによる患者・家族への電話相談技法

著 者 (財)ライフプランニング・センター理事長  日野原重明
発行所 (財)ライフ プランニング センター 健康教育サービスセンター
発行日 1998年2月20日

後編目次 (2/2)

相談時の曖昧な言葉をどう受け止めるか
より正確な情報にする
電話相談の内容(主として成人を対象に)
病状の上手な聞き出し方とその意味の解釈
病状からとらえるための質問
電話相談の内容についてのチェックリスト
電話による健康上の相談内容と対応

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相談時の曖昧な言葉をどう受け止めるか

 毎日の診療の現場にどれだけ曖昧な言葉が行き交っているかをみてみましょう。思いつくだけでもいろいろあります。

 患者さんがこのように曖昧な言葉で訴えるのを医師やナースは毎日聞いているのではないでしょうか。医師はこれを大体「違和感を訴える」などとカルテには記載するようです。しかし、患者さんの曖昧な訴えはそのまま「患者はイライラすると言う」というように記録した上で、それをさらに明確にさせるために上手な援助をするのが専門家としての大切な技術です。

何ともいえない感じ、落ち着かない、
嫌な感じがする、すっきりしない、
気分が落ち込む、味気ない気持ち、
さえない感じ、ぼっとしている、
パッとしない、ものうい感じ、
だるい、けだるい、しんどい、むかむかする・・・etc

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より正確な情報にする

 医学が不確実性な科学であるということを認識した上で、ではどうすれば患者さんからの情報をより正確なものにすることができるかを考えてみましょう。

1.相手の問題提起の知的レベルを読み取る
2.相手の言う症状をより明確な表現で相手に返す
3.いくつか確実なデータの中から問題解決のための技法を一緒に考える
4.多愁訴であれば、その一つ一つにランキングをつける
 (これには患者にとって大切な優先的ランキングと、医学的な対応上優位にすべきランキングを
 区別し、両者を大切にして問題解決の素材とする)
5.当人が言いたいと思っていることを早く把握する
6.相手の満足度を察知する
7.残された問いかけを未来につなぐヒントを与える
8.相手が心配する不確実な将来情報は与えない
9.確実な情報は最高度に利用する
10.安心感を与える

 応対者の心得ておくべきことは、相手の人格を尊重し、大切に扱うことです。そうすればたとえ問題が解決できなくても、相談者の気持ちが和むことがあります。それだけでも電話のコミュニケーションは意味があったともいえるのです。

 私たち医療者が情報をやりとりする上で心得ておかなければならないことは、症状(symptom)と所見(sign)の違いです。

 症状というのは、患者が感じていることです。往々にして、先ほど上げた曖昧な言葉によって訴えられます。

 それに対して、所見というのは脈拍数とか血圧値とか、尿にタンパクが検出されたとか、ECG所見に異常があったというような客観的なデータです。患者さんは一緒にした症状、「身体が熱っぽい」とか「脈が欠滞する」とか、「背中のあたりに発疹が出てきました」などと症状や所見を一緒にして言うことが多いようです。

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電話相談の内容(主として成人を対象に)

 では、電話による相談にはどんなものがあるのでしょうか。

1.健康維持に関するもの(予防と早期発見)
2.疾病相談(診断や治療に関するもの)
3.リハビリテーション上の相談
4.医療保険等に関するもの(老健法や介護保険に関すること)
5.病院紹介、受診の仕方、受診予約
6.その他

 診断をつけるということは、症状として患者が訴えることと、所見として客観的に見たり触れたりして確認できること、そして検査データによって得られた数値などから総合的に判定することです。この場合、患者さんがいやだと思うことは、当人が訴えることを、医療者が「検査では異常がないから、あなたの気のせいでしょう」などと決めつけることです。人間の身体は何よりも敏感なセンサーなのだということを医療者は忘れてはなりません。

 ジョンズ・ホプキンズ大学のタマルティ教授は、「いわゆる名医といわれるような臨床医は、とくに2つのことが上手くできるように自分をトレーニングしなければならない。ひとつは患者に語ることであり、もうひとつは患者の言うことに耳を傾けることである」と述べています。患者の訴えたい事を聞くにはどうしてもある程度の時間を提供しなければならず、それをこちらが大切に受け取っているということを相手に感じさせることが大事です。病歴を書くということは、単に何をしたかということをメモすることではなく、話の内容にこちらの心を寄せることです。厳密にいえば身体的所見(physical sign)とは、医療者(医師やナースやコメディカル)が取り出した客観的データだということです。患者からの電話を聞きながら、何が自覚症か、何が客観的な身体所見かをはっきり聞き分けることがまず必要です。

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病状の上手な聞き出し方とその意味の解釈

 これまでお話したような基本的事項に加えて、TNS独自のキャリアを活かさなければなりません。

 たとえば、「平熱は36度5分」と思い込みすぎてはいないでしょうか。平熱は一人一人違います。「熱はありますか?」と尋ねます。「36度8分です」と聞くと、「熱はなし」とカルテに書き込むかもしれません。ところが、平熱が35度8分であれば、36度8分というのは、当人には熱っぽく感じられて当然です。老人にはそういう例がよく見られます。そういう場合は、「平ぜいの体温はどのくらいですか?」と聞くべきでしょう。37度以下を無熱性の肺炎というのは間違っています。聖路加国際病院の看護記録の体温表からも37度の赤いラインは消すべきだと、私はいつもナースに言っています。

 熱が出るという訴えで考慮しなければならないものに甲状腺機能亢進症があります。
「動悸はしませんか?」「体重は減ってきませんか?」という質問にいずれも該当するのであれば甲状腺機能亢進症の疑いがありますから、甲状腺を専門とする医師に受診を勧めます。更年期症状として患者さんが熱感を訴えることもあります。

 また、手の先、頬、耳などが局所的に赤みを帯びることがありますが、これは毛細血管が拡張しているからで、この部分は熱感があります。私が肺炎で入院したときのことです。ナースに熱っぽいと訴えて熱を測ったのですが、腋窩では36度6分しかない。でも、私の手のひらのあたりに熱感は依然としてある。そこで体温計を手で握ってみたら37度を越していた。体温は身体の各部所で異なっているということを心得ておくべきです。肝臓内では38度前後です。それは肝臓が非常に激しく活動しているからです。

 このように、熱感ひとつとってもみんなが一律ではない事を念頭におくべきです。

 心筋梗塞の場合にも、ほとんどの患者が37度5分から8分くらいの熱がでます。この場合には化学療法は効きません。これは心筋が壊死したために出る熱で、壊死熱といいます。体内に血腫があっても熱が出ます。そして血沈も高くなります。心筋梗塞と狭心症の違いは、「熱はありますか?」と尋ねることで鑑別できることがあります。

 それから、患者は胸が痛いと訴えた場合、年配の人や高血圧症や糖尿病を持つ人ではすぐに心筋梗塞を疑うべきです。ただし、心筋梗塞と診断された患者のうち4分の3は、胸痛ではなく、胃がムカムカして吐くとか、背中が痛い、肩から胸にかけてしびれる、喉がつまるというような症状を訴えています。両顎部の歯肉がしみるようだという人もいました。以前、ある大会社の社長が、ゴルフをしていたら背中が痛くなった。それでそのまま温泉に行って指圧を受けたのですがどうも治らないというので、私の病院に来られた。心電図をとってみると心筋梗塞だったということもありました。

 「手足が冷やっとしませんか?」「冷や汗は出ていませんか?」と聞いて、それが該当すれば心筋梗塞(または時に解離性大動脈瘤)であることは確実です。こういう状態は緊急を要します。そういう場合にはすぐに救急車の手配をしなければなりません。たとえ胃がムカムカして吐いたという訴えであっても、冷や汗をかいていたとすれば、まず心筋梗塞を疑って緊急の手配をする。なぜかといえば、胃の病気ではよほど胃からの大出血でもない限り急変することがないからです。

 階段を昇ったり、食事をした直後に胸が痛いというときには、心臓に負担が加わって起こった狭心症でしょうし、負荷が加わってもなんともないのに、夜中に心臓が苦しくなるのは異型狭心症か重症狭心症です。このように静かにしていても起こる狭心症はとてもたちが悪く、心筋梗塞前狭心症ですから、すぐに心電図をとらなければなりません。

 「動悸がするのですが・・・」というのは、心臓が悪くなくても、期外収縮があるとか、頻脈、肺のうっ血、弁膜症、あるいは貧血があってヘモグロビンが低下しているなどいろいろの病気が考えられます。甲状腺機能亢進症でも動悸や息切れは起こります。心拍数が70から80にもなり、心臓収縮が過度になるからです。

 貧血という用語を患者が使ったり、医療者が使ったりする場合には、その使い方についてはとくに注意を要します。脳貧血とか、顔が青いとか、手足の先が冷たいとかなどと患者さんが表現することが多いのですが、これはよく聞いて貧血といえるかどうかを吟味すべきです。貧血とは、ヘモグロビンが少ないということです。

 冷え性というのもよく患者さんが口にする言葉です。手足の先が冷たく感じたり、寒気がしたりするのは、本当の血液疾患としては鉄分の摂取不足による貧血症、子宮筋腫や甲状腺機能低下症、更年期症状などがありますから、問診の際によく聞くことです。また、老人は冷房を嫌う事が多いようですし、一般に寒がりだということも頭に入れておく必要があります。

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症状からとらえるための質問

1.Closed question
 Closed question(閉じられた質問)というのは、患者さんから特定の解答を求める場合に使います。「はい」「いいえ」という答えを求めるのもこれに含まれます。この質問形式は医療者が主体となっていますから、基本的な質問以外に、後でいうOpen questionを大切にすべきです。

2.病歴の特徴をとらえるために
  いつからか・・・・・・・when
  どのような状況か・・・・how
  何が起こったのか・・・・what
  どこにか・・・・・・・・where

 上記のことをまずきっちりと押さえます。患者さんの個別的な訴えだけを取り上げるのではなく、全体像を把握します。急性の症状で診察を受けに来た人にも、「ほかに困っていることはありませんか?」と尋ねるようにします。「実は数ヶ月前から出血しているのですが・・・」と、思わぬ病気が早期に発見できることもあります。このように患者を主体にして患者の言葉が遠慮なく出せるように質問する方法をOpen questionといいます。

 また、質問は明確でなければなりませんし、一度にいくつもの項目は含めないようにします。
社会的な偏見や差別を表すような質問もしないように気をつけるべきですし、自分の価値観を押しつけることも控えなければなりません。

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電話相談の内容についてのチェックリスト

 姓名、年齢、性別、住所、家族構成、既往歴など基本的な事項を押さえます。手元にチェックリストを置いておくとよいでしょう。アットランダムですが、以下に項目を上げてみましょう。これらをそれぞれの施設ややり方に応じて整理すればよいでしょう。

≪チェックリスト≫
1.保健指導・・・安静、運動、排泄、入浴、食事、療養環境、罨法(冷・温)、清潔、睡眠、予防接種、その他
2.応急処置
3.検査方法・・・手順などについての説明、検査結果によって考えられる疾患についての説明およびその対応
4.疾病、症状および治療についての説明・・・酸素療法、尿管カテーテル、経管栄養、静脈内点滴注射
5.薬の説明・・・処方薬、売薬、注射および副作用
6.生活習慣・・・運動、食事、睡眠、嗜好(アルコール、たばこ、その他)
7.民間療法、漢方
8.妊娠、出産、家族計画
9.老健法のことや介護福祉制度など
10.医療費や受診料
11.医療情報、受診情報、他の開業医や医療施設への紹介
12.その他

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電話による健康上の相談内容と対応

 電話を受ける施設と種類(病院か、診療所、健保組合、保健所か、民間の電話相談センターか)により、また相談者の置かれた状況により、その対応は異なります。

1.病院、診療所、保健所への電話相談の場合

  1)救急車で救急センターを受診する指示をする
  2)その日のうちの来院(または来所)の指示をする
  3)家庭での処置を指示する
  4)他の施設(病院、かかりつけ医、専門施設、老健施設などの紹介)

  上記1)〜4)までの振り分けの指示をトリアージ(triage=仕分け)ということは先にも述べました。

2.トリアージ(仕分け)の要領

  1)救急処置を必要とするもの―即刻医療施設または救急センターを受診
    a.呼吸困難を伴う急性アレルギー反応
    b.痙攣
    c.食中毒
    d.薬の飲み過ぎまたは自殺企図
    e.昏睡または意識混濁
    f.止血できない出血
    g.溺れ
    h.刺傷
    i.意識はあるが頭部の強い打撲
    j.激しい胸痛または冷汗を伴う状況
    k.120/分以上の頻脈

  2)その日のうちにできるだけ早く受診の約束をとる
    a.身体のどこかの激痛
    b.高熱(38度以上)
    c.呼吸困難
    d.頻回な嘔吐または下痢
    e.激しい胸痛や右下腹部の痛み
    f.呼吸困難のないアレルギー反応
    g.高いところからの落下
    h.老人の転倒
    i.四肢の麻痺または運動不全
    j.頭の打撲
    k.顔面蒼白

  3)近医に受診の勧め
    耳、発疹、微熱、下痢、咽喉痛、排尿困難、頚部の強い凝り、
    頻尿、リンパ節の腫れにつづく微熱

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