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トップページ > ナースによる患者・家族への電話相談技法 (日野原重明)

基本編/ナースによる患者・家族への電話相談技法

著 者 (財)ライフプランニング・センター理事長  日野原重明
発行所 (財)ライフ プランニング センター 健康教育サービスセンター
発行日 1998年2月20日

はじめに −21世紀を視野に入れたTNSの活動−

 Telecommunication Nurse Specialist について、私の考えを概念的にお話しします。これから個別的なカリキュラムに沿ってそれぞれ専門とされる講師から最新でかつ臨床に即したレベルの高い講義と、ワークショップ、ロールプレイなどによってこの分野の専門ナースの養成を図っていきたいと思います。専門ナースのための新しい領域の仕事として、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。

前編目次 (1/2)

日本の貧しい医療の実情
これからの医療はどのような方向に進むのか
電話による健康相談
電話医学(Telephone Medicine)とは
電話相談と生活習慣病
電話を用いた相談のコツ
Telecommunication Nurse Specialist (TNS)の専門的業務
  コミュニケーションとは何か
  テレコミュニケーションの特徴
  電話応答の基本
  電話応答者としての適正
医療場面への応用

後編目次(2/2)へ

日本の貧しい医療の実情

 「3時間待ちの3分診療」 ―この言葉は日本の医療の実情を表したものとしてどなたもご存知でしょう。

 病院の外来はどこでも、まるでお祭りの雑踏のように混み合っています。東京の大病院では一日の外来患者の数は2,000人、3,000人というところが少なくなく、大学病院の中には1日4,000人を越すというところもあります。私の働いている聖路加国際病院でも平日は2,200人もの外来患者が受診されます。15年程前に新しく病院を設計した時には外来患者を一日1,500人として予測していましたが、いよいよ10年前に開院してからは、予想をはるかに越える患者数となり、休日の翌日の外来患者数は2,500人にも達する事がありました。そのため待合いのホールもたいへん混み合い、ゆっくり腰掛けて待っていただく事もできないような状態です。そして何より困るのは、診察室で患者さんの訴えられる病状に医師が時間をかけてじっくりと耳を傾けることができないことです。

 新患の場合には少し余分の時間をかけて病歴をとりますが、再来患者になると5分とか、わずか3分の診察時間では、医師は患者さんの問診からどれだけの情報が入手できるでしょうか。みなさんもよくご存知でしょうが、忙しい医師は何やらカルテに書き込んでいて、正面きって患者と顔を合わせようとしてくれない。「検査、薬、はい次の方」と、まるでベルトコンベアに載せたように対処するだけです。そのような風景が日本中の大病院の外来で見られるのが現状です。問診だけでなく診察も申し訳にやる程度のことが多く、そしてやたらに検査が行なわれ、薬も数多く処方されています。

 看護師さんも忙しくしているのは同じです。患者さんは何か聞きたいことがあっても、とても気軽に声をかけられるような雰囲気ではありません。

 一方、日本の人口の高齢化はますますその速度を増しています。高齢者が増えるということは、当然病人も増えるという事です。医療のニーズは増す事はあっても、減ることは考えられません。厚生労働省は、増え続ける医療費に歯どめをかけるためもあって、介護保険や在宅医療などいろいろな政策を打ち出していますが、まず上に述べたような医療の現状を私たちは早急に変革しなければなりません。

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これからの医療はどのような方向に進むのか

 京都大学総合診療部の福井次矢教授の研究によりますと、胸痛を訴えて外来を訪れた患者のうち、ていねいな問診によって71.1%は診断をつけることができる。そして、医師の診察所見を加えると更に5%アップして76.1%、これに簡便な迅速検査データを加えると81.4%になると報告されています(福井次矢、「病歴・診察・迅速検査データの有用性−胸痛患者の診断プロセスにおける定量的評価」)。このことは医療の出発点である初診の際の問診がいかに大事であるかということを示すものです。ところが先頃のNHKテレビで放映されて話題になりましたが、近頃の若い医師は聴診器を使えない人が少なくないというのです。患者さんの胸に聴診器を当てて、じっくりと身体の中の音に耳を傾ける。それに合わせて皮膚の状態や栄養の具合も観察する。このような医師にとって必要とされる基本的な技術が、現在の医学教育ではないがしろにされていて、すぐにMRIとかCTスキャンをオーダーしたりするなど、めったやたらに検査項目に印をつけたりします。ところが、先にもお話したように、医療費削減が焦眉の急ですから、こういうオーダーはそのうち保険を通らなくなるでしょう。もう一度、問診の重要性が見直されなければなりません。

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電話による健康相談

 さて、患者さんの話をよく聞くことによって人々がよくかかる病気(common disease)の7割もの診断がつくのであれば、身体の具合の悪い人がわざわざ遠くの病院まで出かけていき、何時間も待たされて診察を受ける必要があるでしょうか。

 1997年6月、私は台湾で開催された国際健診学会に出席したおり、美兆健診センターを見学しました。この施設では一日3シフト、各60人ずつ、合計一日180人の健診を実施しています。会員制度によって運営されているのですが、電話相談のセンターが設けられていて、会員から寄せられるあらゆる質問に経験豊富なナースが対応していました。寄せられる相談に対して、ナースは手元の健診時のデータを見ながら健康相談にのったり、専門医の診察を受けたほうがいいと判断すれば、相談者の交通の便を考慮した上で、適切な開業医か、病院であればどこの病院のどの科が適当かということを紹介し、あわせて受診先にこれまでのデータを送付します。ここでは電話相談にはトレーニングされたベテランのナースが活躍していました。

 このように従来の医療システムの枠を越えた新しい方法が、次々と効率のよい医療システムを開発しつつあるのです。

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電話医学(Telephone Medicine)とは

 みなさんは“電話医学“という言葉を聞いたことはありますか。この言葉はすでにアメリカ合衆国の専門家の間には、プライマリ・ヘルスケアを効率的に行なう上で必要な医学の一つだといわれて使い始められていますし、イギリスでもそうです。また私の属する聖路加国際病院や財団法人ライフ・プランニング・センターでは、診察する時間の始まる前か、指定した一定の時間に患者さんからの相談や報告の電話を受けています。つまりこれはプライマリ・ヘルスケアを有効にするための一方法で、一口にいえば電話医学と名付けられるものです。これには相談や報告を受けるヘルスケア担当者(医師、ナース、その他)が、電話で受けたデータを上手に仕分け(triage)をし、対応を指示する。それが電話医学とも呼ばれるものです。

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電話相談と生活習慣病

 高血圧症、糖尿病、痛風などのいわゆる生活習慣病は、いったん罹りますと完治することはありません。

 たとえば高血圧症と診断されて降圧剤を処方されたとします。患者さんは、現行の健康保険では、毎月受診をしなければこの薬をもらうことができません。

 ところが、生活習慣病といわれるものは毎日の生活の仕方によってコントロールすべきものであって、それには患者さんの生活のプロフィールをしっかり聴取して、その内容をチェックし、これまでの間違った生活習慣を洗い出し、正しい方向に向けるように指導する事が一番大切なのです。生活習慣を正す主体はあくまでも患者さん当人です。医師やナースなどのプロフェッショナルは、患者さんが自分で測定した血圧値や尿糖、尿たんぱく検査のデータを電話で報告を受ければ、それだけでもかなり適切な指示を出す事ができます。初診でしっかりした診断がつき、その上で適切な生活指導がなされれば、患者には頻回の再診は不必要なのです。糖尿病は3ヶ月に一度、痛風は6ヶ月に一度か二度の受診で十分ですし、甲状腺機能亢進症でも診断さえついていればなにもわざわざ毎月病院へ行って血液を採る必要はないのです。そうすれば、現在の病院外来やクリニックでの再来患者のうち、半分近くは来院の必要性が減るかもしれません。

 アメリカでは、初診では少なくとも20〜40分、再診で10〜20分は時間をかけています。日本でもこのくらいの時間をかけるためには、再診にみえる患者さんのうち、かなりの数を電話による相談に移行してもらえばいいのではないでしょうか。

 「電話だけで大丈夫か」と心配する方もいるかと思いますが、それを大丈夫と思わせるように相談にあたるナースは実力をつけなければならないということになるのです。

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電話を用いた相談のコツ

 まず基本になるのは、相談にあずかるナースは臨床検査のデータの意味する病態をきちんと頭に入れておくことです。検査値の読み方については、いろいろ参考書がありますから、いちばん自分にあったものを選び、とにかく数値を覚えてしまいます。覚えるコツは、まず数値の意味する事に関心を持つことです。

 検査データを判読する上で気をつけなければならないのは、正常値という言葉にあまりまどわされてはいけないということです。若い人と老人とでは正常値が違っていて当然です。たとえば若者の基礎代謝量はほぼ一日1,200kcalですから、まったく食べられない人には1,000kcalの栄養補給の輸液をします。ところが、高齢の私は、これだけ忙しく朝から夜遅くまで仕事をしていますが、一日1,000〜1,200kcalで十分です。これ以上食べると太ってしまうのです。私の年齢(明治44年生まれ)では、筋肉量や骨量の減った体型から計算すると基礎代謝量はおそらく600kcalぐらいでしょう。それなのに老人の入院患者にも1,000kcalの高カロリーの輸液を指示したりする研修医が多いのです。

 今は、正常値というような漠然とした言葉は使わずに、その人の基準値といっています。人は、健康な時から自分の検査値を知っていなければなりません。かかりつけ医師や人間ドックの検査値を読む医師にも同じことがいえます。普通はアルカリフォスファターゼが240単位あることを知っていれば、それが270単位になっていてもたいしたことはありませんが、平素のこの値が70単位の人が260単位になったのであれば何か重大な病気が隠されているのかもしれません。このようにその人の基準よりも高いかどうかということが問題にされるべきなのです。

 また、電話による相談では、専門的に掘り下げた問題に対応するというよりも、いわゆるcommom diseaseに対処できることが要請されますから、ある程度の幅の広い知識、つまりプライマリ・ケアの常識が必要です。内科的なものだけでなく、皮膚科、泌尿器科、整形外科などさまざまの科に及びます。特に老人に関する質問は多岐にわたることが多いので、プライマリ・ケアについてはオールラウンドに対処できなければなりません。例えば皮膚の病気は、日本では外科系に入れられてきましたが、皮膚系は内科といってもいいくらいのシステムをなしています。消化器系、神経系というのと同じように、一つの系統をなすものなのです。そして内臓の症状は皮膚に現れることが少なくないのです。

 ですから、電話相談に従事するナースは、イギリスのGP(一般医)やアメリカの家庭医のように全科にわたる知識を身につける必要があります。その上に問われた相談が緊急を要するものかどうかを判断し、緊急の場合はどのような手を打つか、そのための高度な判断力が要求されるのです。これは振り分けもしくは仕分け医学(triage medicine)というものです。

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Telecommunication Nurse Specialist(TNS)専門的業務

1.コミュニケーションとは何か
 コミュニケーションには大別すると、@言語的コミュニケーションと、A非言語的コミュニケーションとがあります。電話によるコミュニケーションはもちろん言語的コミュニケーションですから、表情、しぐさ、好悪の感情などはお互いに伝達しあうことはできません。また、何となく発せられる雰囲気というようなものも察知することはきわめて困難です。そこで、言語という手段を縦横にかつ正確に駆使する事が要求されます。しかし、顔を見ないで話をしていても、言葉の使い方で、先方の感情も、こちらからの発信の態度も、何となく伝わることが多いので、電話相談をただ言葉という道具だけを用いた会話と割り切ってしまうことは誤りです。先方からのあわてた電話や不安に満ちた言葉に対しては、額面どおりにではなく、柔らかに受け入れるという感性が電話を受けるナースには必要です。

2.テレコミュニケーションの特徴
 みなさんが身につけなければならない技法は、相談者との会話に出現する言葉の概念をまず相互に正しく認識することです。

 相手の言おうとすることをより正確な言葉にして反復します。「あなたのおっしゃることはこういうことなのですね?」と確認します。客観的・理性的なデータにするためです。
 次に、会話が一方的になりがちなので、こちらの対応がどういう形で受け止められたのかを確認しなければならないことです。

 第三に、相談者が会話の継続や中止を選択できるということです。

 最後に、電話相談には時間的な制約があるということです。

3.電話応答の基本
 電話を手段として用いているのはなんと言っても商業の分野が先を行っています。

 『電話で顧客満足ってどうやるの?』(佐野知恭著:日経新聞社、1997)に、「電話応答の基本」として次のようなことがあげられています。

  1.面談のイメージ  服装、姿勢、表情
  2.傾聴  テレコミュニケーションの基本
  3.共感的関係を築く
  4.問題の解決  相手の求めている答えは?

 先にも触れたように、電話の場合、面談のイメージはダイレクトに描けるものではありません。となれば、上記の2以下が大切だということになります。

 まず、「傾聴」です。「聞く(hear)」と「傾聴(listen to)」の違いです。

 「傾聴」のコツは、@片手間に電話応答をしない、A相手の話の腰を折らない、B適当に相づちを打って話を促す、ということでしょうか。

 また、「共感的関係の構築」では、@ペースに合わせる、A相手の話の速さと感情の強弱に応じて適当な間をとる、B相手の状況に応じて共感の強さを表現するということが大事です。

 そして、最後は「問題解決」です。まず、@問題を特定します。必ずメモをとり、相手のポイントを繰り返し、A電話の内容に合った対応をします。電話の内容は、a.相談・質問、b.不満・不安、c.意見・感想の3つに分けられますから、それぞれに応じた対応が必要とされます。

4.電話応答者としての適正
 上記の点から考えられることは、幅広くプライマリー・ケアに通暁していることを前提とした上で、@直感的で、かつ具体性を持ち、状況判断力に優れている人、A外交的で受容性があり、ストレス発散が上手な人(これはまた電話医学のエキスパート、つまりテレコミュニケーション専門ナース<TNS>としてこの業務に従事するのが長続きするということでもあります)でなければなりません。

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医療場面への応用

 科学としての医学は確実性が高くなければならないのは当然なのですが、物理学や化学に比べると、医学はたいへん曖昧模糊としたサイエンスといえましょう。ウィリアム・オスラー教授は、100年ほど前にすでに「医学は不確実性の高い学問である」と言っています。不確実なところからいかにして確実な部分を抽出していくか。その流れを追ってみましょう。

医学は不確実性の高いもの
不確実性の中から確実なものを選択する
確実な情報から何が問題解決になるかを検討する
小さなものでも確実性のあるものは取り上げる
電話での情報伝達には限界があることをよく認識する
目に見えない相手の反応を頭に描き出す
相手に十分に各自の持っている情報や、主として訴えたいというもの(主訴)を
どう表現してよいかを言語化することを考え出す時間を与える
相手の提供する情報を繰り返して相手の言いたいことを認識してもらう
必要があれば次の機会に喜んで電話を受けるムードを示す
相手の言葉のトーンで相手の感じを読み取る
相手の満足度を自己評価する

 そもそも患者さんが適切な言葉を用いて自分の状態を説明できるようにするのが、健康教育の基本でもあります。このことはいろいろの病気についての知識を教え込むこと以上に、必要な健康教育の基本でもあるのです。

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